衣食住の実験ノート

衣食住や育児にまつわることを、いろいろ試して、考察しています

色黒に生まれて

美白化粧品の誕生は、1988年だそう。コウジ菌が美白成分として認められたのが始まりで、それから30年以上、「美白」という概念は美容界に君臨し続けている。

当時10歳のわたしは、残念ながら、どう見積もっても色黒だ。日焼けしやすく、それなりに注意していても、すぐに黒くなる。SPF50の日焼け止めに、サングラス、日傘、帽子で完全防備してるのに、何もしない夫の方が白いという切ない事実。

 

そして、夫は肌のことなんて、1ミリも悩んでいない(ように見える)。実家の親に去年もらった日焼け止めクリームをなんとなく塗って、日差しが照りつける中、1時間のジョギングに出かける。でも、あんまり焼けない。

 

知っているが、こういうことは、とことん不公平で、足が伸びないように、鼻が高くならないように、地黒の肌色も白くはならない。(技術を別にすれば)

 

美白化粧品の誕生から(それ以前からも)、何十年にもわたって、世の中は「色白=美しさの条件」という図式を刷り込み続けている。なので、地黒だと、それだけで「美しさから外れているよ」と宣告されている気になってしまう。

 

色黒の幼少期&思春期のメンタリティー

 

思い出すのは、小学校の遠泳大会で琵琶湖で泳いだ翌日(滋賀県出身です)。皆が「ヒリヒリする〜」と言い出す。数日経つと「皮がむけた〜」と騒ぎ出す。こちらは、すぐに色素が沈着し、ヒリヒリもなければ、皮がめくれることもない。熱さえも持たない。至って通常。ただ、肌色がさらに(黒く)トーンアップしているのみ。

 

丈夫といえば丈夫だけど、皮がめくれてそこそこに落ち着いた肌色の皆の中で、白目と歯の白さが映える真っ黒な肌なのは、なんだか悲しかった。

 

子どもの頃、「色の白いの七難隠す」という言葉を聞いて、わたしは隠せないのだな、と軽くショックを受ける。

大人になってからも、メイク特集で、明るいベースを整える大事さをとことん喧伝される。

朝ドラを見ていると、農作業などで赤黒い肌をしていた田舎の主人公は、都会に出ると、だんだんと白い肌になって洗練されていく。

 

そんなふうに、色白の呪縛は日常のそこかしこに潜んでいて、わたしの劣等感を否応なしにくすぐり続ける。

「肌」が覆っている面積のなんと多いことよ‥!

 

高校時代は、コギャル全盛だった。日焼けサロンに行ってまで色黒化する女子高生がいたけど、わたしは、むしろ、色白上等!みたいな「オリーブ」を読み、渋谷系に憧れていた。地黒度の低いカルチャーに傾倒することで、ますます自分の首を締めていることに、当時のわたしは気付いていたのだろうか。

マッチョに見える見た目に反する内面。そのギャップは、わたしの学生時代にけっこうな影を落とした。

 

 

 

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shu uemuraのファンデーション。光に当てて、この色加減。25色から選べるので、

わたしにも珍しく選択肢がある。左のベースの色味は「ディープベージュ」。

 

 

 

だけど、最近、急速にどうでもよくなってきている。

こんなにすらすらと色黒の呪いが出てくるほど、長年劣等感に苛まれていたのに。。

 

40歳をすぎた、諦めの境地もある。

 

でも、一番の原因は、「色黒でも素敵な人がいる」と思えるようになったこと。今までも、もちろん存在していたのに、白い人のレフ板効果が眩しすぎたようだ。

目に入らなかったのが、ようやく、きちんと視認できるようになってきた。

 

それと、あまりにも美白が定着しすぎて、お面のようにツルッとした若人を見ると、羨ましくもありながら、同時に没個性でつまんないとも思う。(いや交換してくれると言ったら、喜んで差し出しますが。。。)

毛穴に感じる、人間くさいリアルな感じ、悪くない、みたいな。

 

「それはそれでいいんじゃない」と、言ってくれた知り合いがいたのも大きい。「すぐに黒くなって、恨めしい。。」と漏らしたところ、色白の彼女は、さらっと、そう言ってくれた。

 

自分では大層に考えていたことだったけど、他の人から見たら至極どうでもいいことなんだな。

 

「色黒で嫌になっちゃう」的なことを、ポロっと言えるようになったのも、歳をとったおかげ。言うと、楽になるもんだ。他人の言葉に救われる。

 

 相変わらず、美白アイテムも使ってるし、いろんな日除けアイテムも駆使してるが、以前のように切羽詰まった感じはなく、現状維持が目的。

 

自分の姿に向き合って、色黒ならではと思えるところを目指していけたらいいな。

ずっと相入れなかったけど、手に届かないものをいくら追いかけてもしようがないし、人生の後半戦では、なんとか仲良く付き合っていきたい。